STORY
vol.03
茶亭羽當
茶亭羽當は、あわただしい喧噪のなか、静かに座って素晴らしいコーヒー体験を心から味わえる、素晴らしく貴重な場所です。店内のテーブルは満席で、順番待ちの客が静かに椅子に腰かけて列をなしています、驚くほど穏やかで落ち着いた雰囲気に満ちています。テーブルや椅子、キャビネットやアート作品など、目と心を奪われる一風変わったディテールの間を、クラシック音楽と優しい会話が行きかいます。
ターニングテーブルの上で、絶品の自家製シフォンケーキにクリームが塗られている傍ら、大きなテーブルの上には、巨大な観葉植物のディスプレイが飾られています。コーヒーマスターの寺島氏自ら手掛ける見事なフラワーアレンジメントは店の名物で、2週間ごとに入れ替えられます。
そして、コーヒー。木製のバーカウンターの後ろでは、ほの暗い灯りの中、シャツとネクタイ姿のエレガントな男性が丁寧にフィルターコーヒーを淹れています。彼の視線は一点に集中しています。寺島氏は創業時から31年間この店で働き続けていますが、今もなお彼の淹れるコーヒーはすべて、ひたむきな芸術作品です。同じ店で働く田口氏と天野氏も、それぞれ勤続31年と12年のベテランで、彼らの1杯1杯も熟練した味わいです。
バーカウンターの後ろにある棚には、数百種類ものでカップを選んでカップが並んでおり、同じものは1つもありません。コーヒーマスターがその都度、儀式のように、客にぴったりのカップを選んでくれます。今度はどんなカップを選んでもらえるのか、毎回楽しみです。テーブルにつき、ユニークなピンク模様のカップに非の打ちどころのないブラックコーヒーが注がれ、エプロン姿のウェイトレスが7種のシフォンケーキを各テーブルに運んできます。
店の外の灰色の景色が脳裏から消え、時間の流れや会議の予定、そしてラッシュアワーも忘れてしまう程です。カウンター席で物思いにふけりながら一服するビジネスマンや、眼鏡の学生の群れが出入りする姿、そして手慣れた仕草でコーヒーを淹れる様子を眺めていると、時間が逆向きに進んでいるようです。これこそが茶亭羽當のコーヒータイムです。
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